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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和63年(行コ)2号 判決 1989年7月19日

控訴人 磯辺甚三 外三九名

右控訴人四〇名訴訟代理人弁護士 福井泰郎

松波淳一

八十島幹二

吉川嘉和

吉村悟

佐藤辰弥

丸井英弘

内山成樹

内藤隆

海渡雄一

鬼束忠則

福武公子

小嶋啓達

岡部玲子

被控訴人 内閣総理大臣 宇野宗佑

右指定代理人 玉田勝也 外二〇名

主文

一1  原判決中、控訴人磯辺甚三、同吉村清、同栗田憲紘、同住田吉男、同吉田一夫、同上野寿雄、同太田和子、同山口寛治、同村中康雄、同梅木俊一、同河内猛、同奥山裕二、同端俊昭、同勝山博子、同北川政治、同松井一雄、同高橋高一(以下控訴人磯辺ほか一六名という)に関する部分を取り消す。

2  右控訴人らの事件を福井地方裁判所に差し戻す。

二  控訴人磯辺ほか一六名以外の控訴人ら(以下その余の控訴人らという)の本件控訴を棄却する。

三  控訴費用中、第二項に関する部分は、その余の控訴人らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

原判決を取り消す。

本件を福井地方裁判所に差し戻す。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二  当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほかは原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

一  控訴人らの主張

1  法律上保護された利益の存在について

(一) 原子炉等規制法の保護法益

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下原子炉等規制法という)一条は、原子炉等による災害を防止することを目的の一つとし、更に同法二四条一項三号は、「原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があり、かつ、原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること」を、また、同四号は、「原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害の防止上支障がないものであること」を、それぞれ原子炉設置許可の要件としている。

原子炉から生ずる災害の防止により守られる周辺住民の利益は極めて重大な利益であり、原子炉等規制法が「災害の防止」を原子炉設置許可の要件としたのは、これを単に公益的見地からのみ保護しようとしているのではなく、個人的利益保護の見地からもこれを保護しているものと解するのが当然である。したがって、前記規定は、物的施設、人的組織の両面から原子炉等による災害を防止することを目的とするものであり、右災害防止によって保護される個々の住民の生命、身体及び財産上の安全をも保護法益とするものである。

(二) 原子炉等規制法の付属法規及び指針

以上の解釈は、原子炉等規制法だけでなく、規制法以下の付属法規をみるとき、更に明らかとなる。

即ち、原子炉等規制法二四条一項四号が原子炉施設の「位置」が災害の防止上支障のないことを要件としていること、同法の付属法規である試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則(以下原子炉規則という)一条の二第七号、一条の三第二号、一条の三第二項六号、七号、一〇号、試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則等の規定に基づく許容被曝線量等(昭和三五年九月三〇日科学技術庁告示第二一号、以下科学技術庁告示という)二条、九条、並びに原子炉等規制法二四条一項四号の解釈について事実上重要な意義を有する「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」(昭和三九年五月二七日原子力委員会決定、以下原子炉立地審査指針という)、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針について」(昭和五二年六月一四日原子力委員会決定、以下安全設計審査指針という)、「発電用原子炉施設の安全解析に関する気象指針について」(昭和五七年一月二八日原子力安全委員会決定、以下安全解析に関する気象指針という)が、いずれも原子炉施設周辺における放射線被曝を軽減し、右施設周辺住民が原子炉事故による災害を受けることを防止することを重要な目的としていることからも、根拠づけられる。

(三) 公害対策基本法との対比

公害対策基本法は、「国民の健康保護」と「生活環境の保全」とを目的として制定された法律であり(同法一条)、原子炉等規制法は、公害対策基本法八条の規定を受けた法律である。

したがって、原子炉等規制法二四条一項四号の目的は、公害対策基本法の目的とするところと同一と解されるが、同法の「国民の健康」とは、全体としての国民の健康というよりは、具体的に健康を害される個々の国民たる個人の健康を指していることは明らかである。そこで、原子炉等規制法二四条一項四号も、公害対策基本法と同様、個々の住民の個人的利益としても保護しており、周辺住民の生命・身体等をも保護法益としている。

2  行政事件訴訟法三六条の要件の充足について

(一) 行訴法三六条前段と後段との関係

(1)  最高裁昭和五一年四月二七日第三小法廷判決・民集三〇巻三号三八四頁の趣旨

行訴法三六条の前段と後段との関係については一元説と二元説との対立があり、そのうち一元説は更に法律関係還元説と目的達成説とに分かれるが、右最高裁判決は、課税処分の効力が問題となった事案において、当該処分に続く後続処分により損害を受けるおそれのある者は、当該処分の無効確認の訴えにつき原告適格がある旨判示し、行訴法三六条前段の「後続処分により損害を受けるおそれのある者」の要件に該当する場合に、別途、同条後段の「現在の法律関係に関する訴えで目的を達することができない」という要件を必要としないとする説(二元説)か、又は、右「目的」に予防訴訟的機能を含ませ、「現在の法律関係に関する訴え」に還元することが可能であっても、それによっては後続処分を予防することができないときは、「目的を達することができない」場合にあたり、無効確認の訴えは許されるとする説(一元説中の目的達成説)のいずれかをとった。

したがって、後続処分により損害を受けるおそれのある場合は、現在の法律関係に関する訴えを提起することが可能であっても、無効確認の訴えは許されることは明らかである。

(2)  右最高裁判決の射程距離

被控訴人は、右判決は課税処分無効確認訴訟についての判例であり、本件とは事案を異にすると主張する。

しかし、右判例は行訴法三六条の解釈として示されたものであり、ここで問題となるのは同条前段と後段との相互関係であるところ、同条の文理は、課税処分の如き権利侵害行為(二面訴訟)と、原子炉設置許可処分の如き権利侵害許容行為(三面訴訟)とを区別していないのであるから、右判例理論が行政処分一般について等しく適用されるべきことは、同法三六条の解釈として当然のことである。

下級審判例においても、右判例理論が権利侵害許容行為(三面訴訟)にも適用されることが、当然の前提とされている。例えば、大阪高裁昭和五二年一一月三〇日判決・行裁例集二八巻一一号一二六一頁は、「市長が道路敷地に当たる土地につき、道路の区域決定及び供用開始と同時に第三者に対し、道路法による占有許可を与えつつある場合には、右土地の所有者は、右占有許可により生ずる損害の危険を防止する予防的利益があるから、右区域決定及び供用開始の無効確認の訴えの原告適格を有する」と判示する。

(二) 行訴法三六条前段の充足について

(1)  本件原子炉設置許可処分に続く後続処分、即ち、設計及び工事方法の認可(原子炉等規制法二七条)、使用前検査・合格(同二八条)、保安規定の認可(同三七条)の各処分は、原子炉の運転を終極の目的とし、運転の為に必要不可欠であり、運転と密接不可分の関係にあるから、控訴人らは、後続処分の結果、原子炉の運転がなされ被害を被るおそれが生ずるので、行訴法三六条前段の「後続処分によって損害を受けるおそれのある者」という要件を充足する。

(2)  原判決は、後続処分の根拠規定中に控訴人らの個別具体的な利益を保護する規定が存在しないので、控訴人らが「後続処分により損害を受ける者」に該当しないという。

しかし、同法三六条前段所定の「後続処分」の解釈として、「控訴人らの個別具体的な利益がその処分要件中に考慮されているときに限る」というのは狭すぎる。例えば、自作農創設特別措置法による未墾地買収処分の無効確認訴訟に関し、通説・判例は、買収処分に続く売渡処分が「後続処分」に当たることを当然の前提としているが、買収完了後になされる売渡処分については、その処分要件中において、原告たる被買収者の個別具体的な利益など考慮していない。同法三六条前段の要件は、あくまでも条文の文言どおり、「後続処分によって損害を受けるおそれがある」ことなのであって、後続処分自体の性格が、その者の個別具体的な利益をその処分要件中に考慮しているか否かを問うものではない。

(3)  原判決は、後続処分は、原子炉設置許可処分に付随する処分であり、原子炉設置許可処分のような厳格な手続き要件が法定されておらず、後続処分における瑕疵は、原子炉設置許可処分における瑕疵に比べて相対的に重要性が低いことから、控訴人らが後続処分によって損害を受けるおそれがあるとは認められないという。

しかし、後続処分は、<1>新たな危険を発生させ、あるいは原子炉設置許可処分に孕まれていた既存の危険を拡大するおそれがあり、<2>控訴人ら周辺住民の受ける損害が現実化し、具体化していく一連の過程であって、<3>原子炉設置許可処分の相対性と基本性に枠組みされつつも、同処分とは区別された意義を有する独立の行政処分である。そして、原子炉設置許可処分とその後続処分との間には、安全規制上の質的な差異や軽重は設けられておらず、後続処分の各規定に差異があるとすれば、それは設計-建設-運転という段階的な過程に対応したものに過ぎず、原子炉の安全性の確保という観点から差異を生じたものではない。以上のとおり、原子炉等規制法の段階的安全規制においては、安全性の重層的かつ重畳的な確保と理解すべきであり、後続処分の安全規制上の意義を軽視することは許されない。原子炉の設計-建設-運転という過程の進行に伴い、順次周辺住民の安全確保の手続きは軽減されていくと言わんばかりの原判決の理解は、原子炉等規制法の段階的安全規制を曲解するものである。

(4)  被控訴人は、「後続処分により損害を受けるおそれ」とは、後続処分を受けること自体によって損害を被る場合に限られるべきであるとし、控訴人らは、「当該処分に続く処分に基づく第三者の事実行為により、損害を受けるおそれのある者」に過ぎないと主張する。

しかし、これは、単に原子炉設置許可処分の後続処分と控訴人らの損害との間の形式的論理関係を述べたものに過ぎず、それにより、後続処分がなされたことにより発生する控訴人らの被害の現実性を否定することはできない。けだし、原子炉の運転に至るまでの一連の規制行為は、前段階の処分を前提としつつ各段階毎に構成されているところ、これらの行政処分はいずれも原子炉の運転に不可欠であり、かつ原子炉の運転を目的とするものであって、原子炉の運転並びに運転による災害の発生と密接な関連を有するものであるから、後続処分の結果、原子炉の運転がなされることによって被害を被る場合には、「後続処分により損害を受けるおそれがある」という要件を充たすと解すべきだからである。

(三) 行訴法三六条後段の充足について

(1)  同法三六条後段にいう「現在の法律関係に関する訴え」とは、当該処分の無効を前提とする「当事者訴訟」又は「民事訴訟」をいい、右「処分の無効を前提とする民事訴訟」とは「争点訴訟」をいうことについては、判例・学説上全く異論をみない。そして、訴外動力炉・核燃料開発事業団(以下訴外動燃という)を相手方とする原子炉施設の建設・運転差止請求訴訟は、本件原子炉設置許可処分の無効を前提とする争点訴訟ではなく、本件原子炉設置許可処分については、処分の無効を前提とする現在の法律関係訴訟が存在しない。

本件と同じく、行政処分の名宛人以外の者の原告適格に関する事案で、また別途民事差止訴訟の提訴が可能な事案として、建築物の隣接建物の居住者に、建築確認処分の無効確認を求める原告適格があるかという問題があるが、広島高裁昭和五〇年九月一七日判決・行裁例集二六巻九号九九四頁、東京高裁昭和五九年四月一六日判決・行裁例集三五巻四号五一七頁は、建築確認処分の対象である建築物の隣接建物の居住者に原告適格を肯定している。そして、生活環境上の悪影響、火災の危険等の被害を被るおそれがある者は、建築確認の「無効確認を求める法律上の利益を有する者」にあたり、それら「危険の排除は、その性質上、当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係の訴えによってその目的を達しえないものと解される」(右広島高裁判決)と判示している。

控訴人らについては、本件原子炉設置許可処分の無効を前提とする当事者訴訟又は争点訴訟は考えられないので、本件原子炉設置許可処分の無効確認の訴えは、行訴法三六条後段の要件も充足する。

(2)  原判決は、民事差止訴訟の方が無効確認訴訟よりも、本件紛争の抜本的解決のための有効かつ適切な手段という。

しかし、行訴法三六条後段の解釈論としては、そこで比較の対象とされるべき「現在の法律関係訴訟」は、「当該処分の無効を前提とする訴訟」でなければならず、この点を抜きにして、「紛争の抜本的解決のための有効かつ適切な手段」か否かを比較するのは、右条項に反すること明らかである。

しかも、民事差止訴訟の方が有効かつ適切な手段と即断することは誤りであり、無効確認訴訟の方が紛争解決手段として優れている点もある。即ち、第一に、無効確認訴訟では、安全審査基準違反という形式的違法で足り、その意味で勝訴のための最低条件が明示されているから、主張・立証が容易であるのに対し、民事差止訴訟では、人格権侵害という実質的な違法性の主張・立証が必要であり、第二に、原子炉設置許可処分において要求されている安全性の程度は、民事差止訴訟を認容する際に要求される安全性の程度よりも低いといわれており、第三に、無効確認訴訟においては、無効事由として安全審査における手続違反が主張できるのに対し、民事差止訴訟においては、安全審査の手続違反自体は差止事由とはならず、第四に、民事差止訴訟においては、被害と加害行為との因果関係、即ち個々の原告らへの個別的影響までの主張・立証が必要であるのに対し、無効確認訴訟の実体要件としては、かかる個別的因果関係の主張・立証は不要であり、第五に、民事差止訴訟においては、現実の被害が生じていない段階で原告が勝訴するのは、立証の点で困難であるといわれている。要するに、無効確認訴訟と民事差止訴訟は、訴訟対象、要件、効果が異なり、それぞれに長所と短所があり、いずれが本件紛争の抜本的解決のための有効かつ適切な手段かということを、一義的に決定することは困難である。

(3)  被控訴人は、取消訴訟を公定力排除のための特別の訴訟形式と位置づけ、ここから抗告訴訟の排他的管轄(民事訴訟の不適法)を導き、取消訴訟の原告適格は公定力によって枠付けられ、民事訴訟が適法となるのは、行政処分が無効である場合(処分の無効を理由とする争点訴訟の場合)に限られるとして、訴外動燃を相手方とする原子炉施設の建設・運転差止訴訟は争点訴訟に該当すると主張する。

しかし、公権力活動にも司法的統制が及び、公定力の由来となる司法的統制が及ばない公権力活動を考える余地のない今日では、公定力排除訴訟としての抗告訴訟を考える基盤自体が消滅しており、被控訴人が主張する公定力理論そのものが誤っている。また、被控訴人は全ての行政処分について公定力が生ずるかの如く主張するが、取消訴訟を公定力排除訴訟と位置付けるのは、侵益的行政処分を受けたものが争う場合を念頭に置いているのであって、第三者に与えられた受益的行政行為により不利益を被る者が争う場合は、元々公定力など問題とすることなく原告適格が認められているから、公定力と取消訴訟の原告適格とは関係がない。

仮に被控訴人主張の公定力理論に立脚したとしても、民事差止訴訟の提起が不許とされるのは、原子炉設置許可処分の公定力の及ぶ限度であり、この場合の公定力の及ぶ限度とは、原子炉設置許可の処分要件に該当するとして判断された事柄が外延を画する。しかるに、控訴人らが民事差止訴訟で請求原因としている、温排水の問題や廃棄物処理の問題あるいは廃炉の問題等は、原子炉設置許可の判断対象とならなかったものであるから、公定力は及ばない。したがって、仮に被控訴人の論理に立脚したとしても、民事差止訴訟を争点訴訟と解することはできない。

原子炉設置許可処分の周辺住民に対する公定力を認めるとしても、それは当該許可が有効であり、許可制度という手段を通じての法益保護は一応受けているという限りのものに過ぎない。原子炉設置許可処分の際の安全審査が不十分で処分が違法であり、右保護が受けられなかったと主張するのであれば、原子炉設置許可処分の取消訴訟によるべきであり、処分の取消事由を主張して、いきなり民事差止訴訟を提起することはできないが、原子炉の操業により生命・身体等に危険が生ずるというのであれば、人格権や財産権に基づき民事差止訴訟を提起できる。処分の違法性(処分要件の存否)を争う場合は取消訴訟によるべきであり、取消訴訟においては人格権等の侵害は審理の対象とならず、一方、人格権等を争う場合は民事訴訟によるべきであり、民事訴訟においては処分の違法性は審理の対象にならない。被控訴人のように、公定力から直ちに民事差止訴訟の不適法を帰結することは、誤っている。

被控訴人は民事差止訴訟は部分的な争点訴訟であるという。しかし、一個の訴訟の中に異なる複数の訴訟類型が存在することの訴訟法的意味を理解し難い上、本件無効確認訴訟を部分的に却下することが有り得ない以上、全体としてその適法あるいは不適法の判断を下さざるを得ないのであり、部分的にでも争点訴訟でない請求部分が有る以上、無効確認訴訟は適法と考えるのが当然の結論である。

二  被控訴人の主張

1  法律上保護された利益の不存在について

(一) 重大な利益侵害の蓋然性の点について

控訴人らは、原子炉等規制法二四条一項四号の要件が充足されない場合には、原子炉施設の周辺住民の生命・身体等という重大な利益が侵害される恐れがあるとして、右規定が原子炉設置周辺住民の個別具体的な利益をも保護する目的を有すると主張する。

しかし、利益の重大性を根拠に原子炉設置の周辺住民の原告適格を肯定することは、最高裁判例の立場である法的利益救済説の意味・内容を理解せず、法的利益救済説と利益救済説とを混同するものであって、失当である。

即ち、法的利益救済説は、当該処分の根拠法規が行政権の行使に対して制約を課している趣旨、即ち、当該実体法規の法解釈によって原告適格の有無を判断するのに対し、利益救済説は、行政実体法規の解釈を離れて、当該利益そのものが直接的かつ重大なものであるか否かという観点から、原告適格の有無を判断するものである。したがって、控訴人らの主張する利益が生命・身体という重大な利益であること自体を根拠に、控訴人らの原告適格を肯定することは、抽象論において法的利益救済説に立つ旨を示しても、その実体は利益救済説の立場そのものに外ならず、右のような判断手法は法的利益救済説とは異質のものである。

(二) 周辺住民の個人的利益を抜きにしては公益も考えられないとの点について

控訴人らは、原子炉等規制法二四条一項四号の保護している「公益」は、原子炉施設の周辺住民の個人的利益を抜きにしては考えられないことを理由に、右規定が原子炉施設の周辺住民の個別具体的な利益をも保護していると主張する。

しかし、一般に、公益保護のための私権制限に関する措置についての行政庁の処分が、その根拠となった行政法規の規定に違反し、法の保護する公益を違法に侵害するものであっても、右公益に包摂される不特定多数者の個別的利益の侵害は、単なる法の反射的利益の侵害にとどまるから、このような侵害を受けたに過ぎない者は、右処分の取消を求めるについて原告適格を有しない。ただ、例外的に、特に行政法規が、一般的公益と並んで特定の者の個人的利益をも、右の公益の中に包摂ないしは吸収解消されないところの利益として、これを保護しているものと解される場合に限り、右処分により右利益を違法に侵害された特定の個々人につき、当該処分の取消を求める原告適格を肯認することができるのである。

そして、原子炉等規制法の関係規定は、専ら同法一条、二四条一項各号所定の一般的公益の保護を目的とするものであり、右の一般的公益と並んで、原子炉施設周辺住民の個人的利益をも、右の公益の中に包摂ないしは吸収解消されないところの個別的利益として、これを具体的に保護しようとする趣旨を窺わせる規定は一切存在しない。

(三) 原子炉等規制法の付属法規及び指針について

原子炉等規制法は、同法二四条一項において原子炉設置許可処分の処分要件を具体的に列挙して規制しており、右処分要件を加重したり、更に具体化することを下位の付属法規に委任していないから、原子炉設置許可処分の処分要件は、同法二四条一項が定めるところに尽きるのであって、原子炉等規制法の付属法規である原子炉規則、科学技術庁告示は、原子炉設置許可処分の処分要件を定めたものではない。

原子炉立地審査指針、安全設計審査指針、安全解析に関する気象指針は、原子炉設置許可処分に際しての諮問機関である原子力安全委員会が、安全審査を行うに際しての裁量権の行使として、審査の内部的な指針を定めた内規に過ぎない。右指針は、安全審査の要件を網羅的かつ厳格に定めたものではないし、また、知見の進歩により改定されることを予告されたものである。

したがって、このような性格を有する付属法規及び指針を根拠に、原子炉等規制法の解釈を論ずることは本末転倒である。

(四) 公害対策基本法について

控訴人らは、原子炉等規制法二四条一項四号が原子炉施設周辺住民の個人的利益をも保護法益としていることは、公害対策基本法との対比上からもその根拠を見出すことができると主張する。

しかし、原子炉等規制法は昭和三二年に制定されたものであり、昭和四二年に制定された公害対策基本法の規定を受けて制定されたものではない以上、同法一条は、「国民の健康を保護する」ことを目的とすると規定しているが、これは抽象的な国民一般の健康を保護することを目的とする趣旨であり、同法が一般的公益の中に包摂解消されてしまうことのない具体的な国民個々人の健康を保護法益としているものではない。

2  行政事件訴訟法三六条の要件の欠如について

(一) 無効等確認の訴えの補充性

行訴法は、行政処分に瑕疵が存在したとしても、当然にはその効力を否定することはできず、法定の出訴期間内にその取消訴訟を提起して、当該処分に瑕疵が存在することを有権的に確定し、その効力を失わせる取消判決を得る方法以外には、これを争うことができないものとし、取消訴訟を提起することなく出訴期間を徒過したときは、もはや当該処分の効力を争うことができないものとしている。

他方、同法は、行政処分の瑕疵の種類・程度のいかんによっては、右のような取消訴訟の排他的管轄性や不可争性の制約を受けない類型の瑕疵の存在を認めた上、このような瑕疵の存在するときには、取消訴訟の方法によらなくても、例外的に、何人も何時如何なる手続においても、当該処分の効力を争うことができるものとしており、これが無効等確認の訴え(三条四項、三六条)、争点訴訟(四五条)に外ならない。

したがって、行訴法三条四項、三六条に規定する無効等確認の訴えは、取消訴訟中心主義をとる行訴法の下において、かつ、過去の法律関係の確認訴訟は例外的な場合にのみ許容されるとする民訴法及び行訴法の一般原則の下において、例外的・補充的に許容される訴訟形式であって、漫然と便宜的に認められるべきではなく、その要件は十分に吟味されなければならない。

(二) 行訴法三六条前段と後段の関係

(1)  最高裁昭和五一年四月二七日判決の趣旨

右最高裁判決は、「納税者が課税処分を受け、当該課税処分にかかる税金を未だ納付していないため、滞納処分を受けるおそれがある場合において、右課税処分の無効を主張してこれを争おうとするとき」という事案において、「納税者は、行訴法三六条により、右課税処分の無効確認を求める訴えを提起することができる」との結論を述べたにすぎず、一般論として、行訴法三六条についてどのような見解を採るかを明らかにしたものではなく、まして、右判決が二元説又は一元説中の目的達成説を採ったものと理解することは、控訴人らの独断である。

そして、右最高裁判決は、後続処分により損害を受けるおそれのある場合には、現在の法律関係に関する訴えを提起することが可能であるというだけで、無効確認の訴えを否定することをしない趣旨であるとしても、これは、右判決が法律還元説を採らなかったことを述べているに過ぎず、そのことから直ちに、後続処分により損害を受けるおそれのある場合には、現在の法律関係に関する訴えを提起することが可能であっても、常に無効確認の訴えを提起することが可能であることを肯定したものではない。

(2)  右最高裁判決の射程距離

右判例の事案においては、当該課税処分の納税者が、後続処分である滞納処分あるいはその執行を免れるための仮の救済措置との関係で、公法上の当事者訴訟によっては、行訴法二五条による執行停止や仮処分による救済を求めることができない(前者につき行訴法四一条、後者につき同法四四条参照)ことから、無効確認の訴えの原告適格を認めるべき実際的必要性が高かったのであり(無効確認の訴えには、同法三八条三項により同法二五条の準用がある)、これに対し本件においては、民事訴訟である差止訴訟を本案として、仮処分による仮の救済を受け得る途がある。

したがって、右判決とは全く事案を異にし、原子炉施設周辺住民に原子炉設置許可処分の無効確認を求める原告適格が有るか否かが争われている事案について、右判決の射程距離が当然に及ぶというものではなく、原判決が、「後続処分により損害を受けるおそれのある場合」でも、他に紛争の有効かつ適切な解決手段たり得る「現在の法律関係に関する訴えを提起することが可能である」ときは、無効確認の訴えの原告適格は認められないとしたことは、その限りにおいて正当であり、何ら右最高裁判決に反するものではない。

(三) 行訴法三六条前段の要件の欠如

行訴法三六条前段を根拠に、無効確認訴訟が後続処分を未然に防止するという予防訴訟的機能を有するとしても、それは、後続処分を受けること自体によって当該原告が損害を被るため、後続処分を予め防止する必要があるために外ならない。しかるに、原子炉設置許可処分の後続処分がされても、それ自体によって控訴人らに損害が生ずる余地はなく、控訴人らは、原子炉設置許可処分の「後続処分により損害を受けるおそれのある者」に当たらない。即ち、

(1)  原子炉施設を設置・運転するためには、原子炉等規制法二三条一項四号の原子炉設置許可処分を受けただけでは足りず、原子炉施設の工事に着手する前に、同法二七条の設計及び工事方法の認可処分を受けなければならず、また、原子炉施設の運転を開始する前に、同法二八条の使用前検査・合格処分、同法三七条の保安規定の認可処分を受けなければならず、更に、運転開始後においても、同法二九条の定期検査処分を受けなければならない。

(2)  右設計等の認可処分は、原子炉設置許可処分との関係において、一連の手続のうちの後続処分ということができるが、右設計等の認可がされても、それ自体によって控訴人らに損害が生ずるものではなく、控訴人らに損害が生ずる余地があるとすれば、それは、原子炉の設置者が現実に原子炉施設を設置して運転することによるのであり、その間には前記のとおり種々の処分が存在し、しかも、第三者のする原子炉施設の設置・運転という事実行為により損害を受けるおそれがあるに過ぎない。

(3)  しかも、原子炉設置許可処分は、申請者に対し、原子炉設置に関する一般的禁止を当該申請に係る原子炉につき解除して、当該原子炉を適法に設置し得る自由を回復せしめる法律上の効果を有するものに過ぎず、被許可者に、当該原子炉の運転という事実行為を行い得る地位を付与する性質のものではない。

(4)  結局、控訴人らは、「当該処分に続く処分に基づく第三者の事実行為」により損害を受けるおそれのある者に過ぎず、右のような事実行為をもって後続処分と解することもできないので、控訴人らは「当該処分に続く処分により損害を受けるおそれのある者」に該当しない。

(四) 行訴法三六条後段の要件の欠如

仮に、控訴人らに原子炉設置許可処分の取消を求める原告適格が肯定されるとすれば、控訴人らが別訴で訴外動燃を相手に本件原子炉施設の建設・運転の差止めを求めている民事訴訟は、本件原子炉設置許可処分の公定力が控訴人らに及ぶ限度で、行訴法三六条後段にいう「当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え」(争点訴訟)に該当し、控訴人らは同法三六条後段の要件も充たさない。即ち、

(1)  行政処分取消訴訟は、違法な行政処分によって自己の権利・利益を侵害された者については、一般の民事訴訟手続によっては当該処分の法律上の効果の通用力(公定力)を争うことは許されないこととする一方、そのような国民の権利・利益を救済する制度として、行訴法により特別に設けられた訴訟手続である。そうだとすれば、一般の民事訴訟手続によらず、取消訴訟という特別の行政訴訟手続によるべき法律上の利益を有する者は、当該処分の法律上の効果を受け、当該処分の公定力により右の法律上の効果を受忍すべきことを命じられている者に限られるべきである。そして、ある者につき処分の取消を求める法律上の利益を肯認するということは、その者に対して当該処分の法律上の効果が及ぶことをその論理的前提とするものであり、その者には、当該処分の取消訴訟の提起が許される反面、処分の公定力によって、当該処分の法律上の効果と抵触する内容の民事訴訟の提起が許されないことになる。

(2)  仮に、控訴人らに原子炉設置許可処分の取消を求める原告適格が肯定されるとすれば、それは、原子炉設置許可処分の効力が控訴人らにも及ぶことを当然の前提とするものであり、右効力については公定力があるから、原子炉設置許可処分が取り消されない限り、控訴人らはその効力を受忍せざるを得ないことになる。そして、これを原子炉の設置・運転の差止請求の観点からみると、原子炉設置許可処分の処分要件(特に、原子炉施設の位置、構造及び設備が原子炉等による災害の防止上支障がないものであること)に該当するとして判断された事柄と矛盾・抵触する事柄を主張して、原子炉の設置・運転の差止めを求めることは、処分要件不適合を理由に、原子炉設置許可という行政処分の執行ないしは手続の続行の停止を求めるに等しく、民事訴訟事項として許されないことになる。しかし、もし本件原子炉設置許可処分が当然無効であるとすれば、控訴人らは、民事差止訴訟においても右のような主張をして、本件原子炉施設の建設・運転の差止めを求めることも許されることになるので、結局、控訴人らが本件原子炉施設の建設・運転の差止めを求めている民事訴訟は、本件原子炉設置許可処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴訟(争点訴訟)ということになる。

(3)  そうすると、控訴人らは、本件原子炉施設の設置・運転によって生命・身体等が侵害されると主張するのであれば、本件原子炉施設の設置・運転の差止めを求める民事訴訟(行訴法三六条後段の争点訴訟)が用意されているのであり、現に控訴人らは右民事差止訴訟を提起しているのであるから、控訴人らは、同条後段にいう「当該処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない者」に該当しない。

(4)  控訴人らは、別件民事差止訴訟の請求原因事実には、温排水の問題や廃棄物処理の問題あるいは廃炉の問題等、原子炉設置許可処分の無効を前提としなくとも成立する主張が含まれているとして、別件民事差止訴訟が争点訴訟ではないと主張する。しかし、一般に無効確認訴訟が適法か否かは、原告らが行訴法三六条にいう「現在の法律関係に関する訴え」を提起し得るか否かによるのであって、「現在の法律関係に関する訴え」を現に提起しているか否かによるのではない。しかも、別件民事差止訴訟が全ての主張との関係で争点訴訟となるのではなく、争点訴訟となるのは、原子炉設置許可処分の処分要件(特に、原子炉施設の位置、構造及び設備が原子炉等による災害の防止上支障がないものであること)に該当するとして判断された事柄と矛盾・抵触する事柄を主張して、原子炉の設置・運転の差止めを求める請求部分に限られるのであり、別件民事差止訴訟はいわば部分的な争点訴訟である。

理由

一  本件原子炉設置許可処分の存在

訴外動燃が昭和五五年一二月一〇日被控訴人に対し、原子炉等規制法二三条一項四号に基づき、高速増殖炉「もんじゅ」にかかる原子炉設置許可申請をし、被控訴人は昭和五八年五月二七日訴外動燃に対し、本件原子炉設置許可処分をしたことは、当事者間に争いがない。

二  控訴人らの原告適格

1  「法律上の利益を有する者」に当るか

(一)  本訴は原子炉設置許可処分の無効確認訴訟であるが、行政事件訴訟法三六条によると、「処分等の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有する者」でなければ、無効確認の訴えを提起する原告適格がない。右にいう「法律上の利益を有する者」は、同じ抗告訴訟である取消訴訟についての原告適格を定めた同法九条の、処分等の取消を求めるにつき「法律上の利益を有する者」と趣旨は同じである。よって、控訴人らが、右「法律上の利益を有する者」に当るかどうかにつき判断すべきところ、右「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであるが、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含む場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有する(最高裁昭和五三年三月一四日第三小法廷判決・民集三二巻二号二一一頁)ということができる。そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益を、それが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規及びそれと目的を共通する関連法規の関係規定によって形成される法体系の中において、当該処分の根拠規定が、当該処分を通じて右のような個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置付けられているかどうかによって決すべきである(最高裁平成元年二月一七日第二小法廷判決・判例時報一三〇六号五頁)と解される。

(二)  そこで、原子炉等規制法をみるに、同法は、放射線による障害を防止し、公共の安全を確保するため、原子力基本法二〇条に基づき制定されたものであり、原子炉等による災害を防止して、公共の安全を図ることを目的の一つとしている(原子炉等規制法一条)。そして、研究開発段階にある原子炉を設置しようとする者は、原子炉等規制法二三条、同施行令六条二項、原子炉規則一条の三に基づき、主務大臣に対し原子炉設置許可の申請を行わなければならず、主務大臣は、原子炉施設の位置、構造及び設備が原子炉等による災害の防止上支障がないものであると認めるときでなければ、原子炉の設置を許可してはならず(原子炉等規制法二四条一項四号)、右許可をする場合においては、予め、右災害の防止上支障がないものであることについて、原子力安全委員会の意見を聴き、これを十分に尊重してしなければならない(同法二四条二項)とされている。また原子力安全委員会は、原子力の安全の確保のための規制に関する事項を所掌するため、総理府に設置された国家行政組織法八条所定の機関であり(原子力基本法四条、五条一項、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法一三条)、個々の原子炉に係る安全性に関する事項を調査審議するため、原子炉安全専門審査会を置き(同設置法一六条)、公開ヒアリング等を実施し、当該原子炉固有の安全性について地元住民の意見等を参酌する(「原子力安全委員会の当面の施策について」昭和五三年一二月二七日原子力安全委員会決定)こととされている。

(三)  更に、同法の付属法規である原子炉規則、科学技術庁告示、並びに原子力安全委員会(旧原子力委員会)が定めた安全審査指針をみるに、これらにも災害防止のための細目的規定が設けられている。即ち、原子炉施設の周囲に一般人が常時立ち入ることがない「周辺監視区域」を設定し(原子炉規則七条三号)、その外側に居住する住民の年間許容被曝線量は〇・五レムとする旨定め(原子炉規則一条の二第七号、科学技術庁告示一条、二条)、原子炉設置許可申請者は、「原子炉施設を設置しようとする場所に関する気象、地盤、水理、地震、社会環境等の状況に関する説明書」(原子炉規則一条の三第二項六号)、「原子炉又はその主要な附属施設を設置しようとする地点から二〇キロメートル以内の地域を含む縮尺二〇万分の一の地図、及び五キロメートル以内の地域を含む縮尺五万分の一の地図」(同七号)、「原子炉施設の安全設計に関する説明書」(同八号)、「核燃料物質及び核燃料物質によって汚染された物による放射線の被曝管理並びに放射性廃棄物の廃棄に関する説明書」(同九号)及び「原子炉の操作上の過失、機械又は装置の故障、地震、火災等があった場合に発生すると想定される原子炉の事故の種類、程度、影響等に関する説明書」(同一〇号)の提出を義務付けられ、主務大臣は、原子炉等規制法二四条一項四号の許可要件の適合性の審査においては、許可申請者から提出された右申請書類をもとに、原子炉立地審査指針、安全設計審査指針、安全解析に関する気象指針等の安全審査指針に基づき、当該原子炉施設の基本設計につき、平常運転時における周辺住民の被曝が十分に抑制されているか、重大な事故の発生を仮定しても周辺住民に放射線障害を与えないか等について審査・確認することとされている。

(四)  一方、<証拠>によると、原子炉施設は、その安全性が最重要の問題となっているところ、原理から想定される原子炉事故のうち、最大のものは、冷却材喪失事故であり、なんらかの原因で装置に異常が生じ、冷却材が喪失すると、炉心過熱、制御不能となり、出力暴走により炉心溶融(メルトダウン)と続き、ついに、圧力容器、格納容器が破壊され、毒性のある放射性物質が環境へ放出される最悪の事態となること、そのため、放射性物質は半径数キロメートルないしは数十キロメートルの範囲の地域を直撃し、気象条件によっては、その降下地域は百キロメートルないしは数百キロメートルの遠方にまでに及び、避難が遅れた住民の生命・身体に重大な放射能障害を及ぼすこと、もっとも科学者らは、考えられるあらゆる予防策を検討し、自動緊急停止装置その他の多重防止装置を設計しているため、現在では、大事故発生の確率は非常に小さくなってきているが、しかし、いかに注意深く設計し、厳密に管理しても、構造的な故障や、計器の不調、人為的ミスその他の不幸なできごとの発生を免れることはできない、即ち事故の可能性を皆無とする安全な保証は得られていないこと、そのため、原子炉施設のある地区住民は、確率は小さいが、万一事故が発生すると、原子炉からの距離が近い者ほど、より大なる被害を受けることになるのであって、その意味で、近接住民は、災害の危険性にさらされ、不安感を抱いていることが認められる。

(五)  ところで、当該処分の根拠規定が、個人の個別的利益をも保護すべきものとして位置付けられているかどうかの判断にあたっては、当該規定や関連法規の規定自体にその旨が明言されているかどうか、或いは、間接的に個別的利益を保護することを表した規定(例えば森林法二七条の直接の利害関係を有する者)が存在するかどうかといった規定の体裁・文言によって決するだけでなく、それに加えて、当該処分によって侵害される第三者の利益の特質をも総合し、合理的解釈に従って判断すべきものと解される。

そこで、前記(二)ないし(四)認定の原子炉施設の安全性に関する法体系に、周辺住民が受ける被害の特質・程度を加え、これらを総合して考えると、原子炉等規制法二四条一項四号の「災害の防止」の規定は、究極的には公共の安全という一般的公益の保護を目的とするものであるとしても、それは第一次的には、具体的な周辺住民の重大な私益である生命・身体の安全を保護することから開始されなければならない、これらを公益の中に包摂・吸収してしまうにはあまりにも重大かつ個別的であって条理に反するとみるのが相当であるから、直接災害を受ける危険性のある周辺住民について、災害の防止に関する個人的な利益を、右公益中に包摂ないしは吸収解消されないところの個別具体的な利益として、法は保護している、前記根拠法条はそのような趣旨の規定として位置付けられていると解するのが相当である。

そして、前記認定によると、「周辺住民」とは、万一に想定される最大級の事故によって直撃を受けると考えられる当該原子炉施設中心(原子炉)より半径約二〇キロメートルの範囲内に住居を有する者がこれに相当し、気象条件によっては、重大な被害を受けることは考えられるが、まだ時間的に避難の可能性ある、右範囲外の者は、同法の具体的保護の対象としての周辺住民には該当しないと解するのが相当である。

(六)  被控訴人は、原子炉等規制法には、周辺住民の個別的利益を保護すべきものとする趣旨は窺えないと主張するが、前認定のとおり、関係法規の規定内容並びに被害法益の特質並びに重大性に照らせば、そのようには解されないので、右主張は理由がない。

また被控訴人は、下位の付属法規に過ぎない原子炉規則、科学技術庁告示や、単なる内部的な審査指針に過ぎない原子力委員会の安全審査指針を根拠に、原子炉等規制法の解釈を論ずることは誤りであると主張するが、同法二四条一項四号所定の許可要件の適合性の審査は、高度の専門技術的裁量に係るものであり、右の許可要件について予め法律で具体的な定めをしておくことは、右審査に弾力性を失わせ、科学技術の進歩、研究の成果を必要に応じて速やかに右審査に取り入れていく上で障害となりやすいことから、同法は、法律に根拠を有する明確な安全審査基準を設けることをせず、具体的な安全審査基準の策定についても、合理的な範囲内において行政庁の専門技術的裁量に委ねたのであり、ただ、右の審査・判断の客観性の担保、その確実性及び予測可能性の確保等に資するため、可能な事項については一定の審査基準を明確にしておくという趣旨から、前記安全審査指針が定められたと解され、かつこれらの指針類は公表されているから、同法二四条一項四号の解釈に際して、これらの規定等も参考にすることは許されるものと解する。被控訴人の前記主張も理由がない。

被控訴人は更に、原子炉設置許可処分を受けた者は、右許可処分のみでは、控訴人ら主張のような利益侵害(被害)発生の原因となるべき原子炉の運転ができる地位を取得するものではなく、更に後続処分を受け、更に原子炉運転という事実行為をなすことによって初めて、右のような利益侵害の蓋然性の有無、程度及びその具体的内容が確定するものであるから、周辺住民は、右処分によりその主張のような利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者には当たらないと主張する。しかし、原子炉等規制法並びに前記付属法規によると、原子炉設置許可申請者で当該原子炉の運転を目的としない者はあり得ず、原子炉設置許可処分は、後続処分や原子炉の運転を必然的なものとして予定していること、しかも、原子炉設置許可処分は、原子炉の設置・運転に関する一連の規制中の冒頭に位置し、原子炉施設の安全性の根幹をなす基本設計ないしは基本的設計方針に関して安全性の審査を行うものであり、後続処分においては、原子炉設置許可処分において、原子炉施設の基本設計について安全性の審査がなされたことを前提に、原子炉施設の詳細設計、工事、実際の運転といった異なる観点から安全性の審査がなされるのであって、原子炉施設の基本設計には瑕疵がなく、これに起因する災害のおそれはないものとして進められるものであること、したがって、原子炉設置許可処分があれば、その後原子炉設置、運転へと連続し、その結果周辺住民をして、前記潜在的・顕在的危険性へと接近させることになり、その危険にさらすこと自体が法益侵害とみられること、そして以上の関係は許可処分との間に必然性があるとみるのが相当である。以上の点を考慮すると、本件原子炉設置許可処分により、控訴人のうち一定範囲の周辺住民の利益が必然的に侵害されるおそれがあるというベきであるから、被控訴人の主張は理由がない。

なお、控訴人らは、本件原子炉施設である高速増殖炉「もんじゅ」は、その基本設計の安全性に重大な瑕疵があり、(一)炉工学的にみて、(1) 燃料体の健全性が欠如していることから、燃料被覆管の腐食割れ、燃料の溶融、燃料ビンの破損、燃料集合体の炉内湾曲等を引き起こす危険性があり、(2) 冷却材に液体ナトリウムを用いることから、電熱管・蒸気発生器等の破損、ナトリウムの爆発・放射等を引き起こす危険性があり、(3) 不安定な炉心特性を有し暴走の可能性があり、(4) 中性子照射により炉心が脆化しやすく、(5) 原子炉停止系に不備があり、(6) 緊急炉心冷却装置が欠如している等、炉心溶融や格納容器の破壊等に繋がる重大事故が起こるおそれがある、(二)その設置場所がわが国でも有数の地震地帯であり、しかも地震に極めて弱い地盤上にあることから、耐震性に問題があり、地震時に炉心溶融や格納容器の破壊等に繋がる重大事故が起こるおそれがあるなどとして、本件原子炉設置許可処分には、原子炉等規制法二四条一項四号所定の許可要件の適合性の審査に重大かつ明白な瑕疵があると主張している。そして、本件原子炉施設の基本設計に控訴人らの主張するとおり重大な瑕疵があり、本件原子炉設置許可処分に際してこの点が看過されるという重大かつ明白な違法があったという点は本案において主張・立証されるべき事項であって、原告適格を判断する段階で考慮すべきものでないことは当然である。

(七)  以上によると、本件高速増殖炉「もんじゅ」中心部から半径二〇キロメートルの範囲内に住居を有すると認められる主文第一項掲記の控訴人磯辺ほか一六名は、本訴につき、前記「法律上の利益を有する者」と認められるが、その余の控訴人らは、「法律上の利益を有する者」とはいえず、原告適格はない。

2  「当該処分の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」に当るか

(一)  行政事件訴訟法三六条は、無効等確認の訴えは、「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる。」として、無効等確認の訴えの補充性の要件について規定しているところ、右の「現在の法律関係に関する訴え」とは、当該処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟(争点訴訟)をいい、「目的を達することができない」とは、「処分に基づいて生ずる法律関係に関し、処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては、本来その処分のために被っている不利益を排除することができない」(最高裁昭和四五年一一月六日第二小法廷判決・民集二四巻一二号一七二一頁)ことをいう。

しかし、控訴人らについては、以下のとおり本件原子炉設置許可処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えは、訴訟形態としては想定できない。

(二)  民事差止訴訟について

(1)  被控訴人は、本件原子炉施設の設置・運転によって控訴人らの権利が侵害されると主張するのであれば、訴外動燃を相手に、本件原子炉施設の建設・運転の差止めを求める民事訴訟が用意されており、右民事差止訴訟は、「処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴え」(争点訴訟)に該当し、しかも、本件原子炉設置許可処分無効確認訴訟と右民事差止訴訟とを比較すると、民事差止訴訟の方が本件紛争を有効かつ適切に解決し得るものであるから、「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」に該当せず、補充性の要件を充たさない旨主張する。

しかし、原子炉等規制法二四条一項四号所定の許可要件の適合性の審査に重大かつ明白な瑕疵があれば、直ちに本件原子炉設置許可処分は無効となるのであり、それによって訴訟目的を達成できるのに対し、民事差止訴訟では、本件原子炉施設の設置・運転によって控訴人らの人格権が侵害され、生命・身体に対する被害発生の蓋然性があると認められる場合、即ち差止めの要件が肯定されてはじめて差止請求が認められるのであって、両訴訟での審理の対象は異なるというべきである。

例えば、本件原子炉施設の安全性の審査に際して策定された安全審査基準が不合理なものであったり、本件原子炉施設が右安全審査基準を充たしておらず、その瑕疵が重大かつ明白であれば、本件原子炉設置許可処分は無効と判断されるのに対し、右安全審査基準が不合理なものであったり、本件原子炉施設が右安全審査基準を充たしておらず、無効な許可処分と認められたとしても、本件原子炉施設が別の機能で災害発生を防いでいるため、控訴人らの生命・身体に被害をもたらす蓋然性が当然にあるとはいえないとなれば、民事差止訴訟は棄却となるのであって、その意味で、原子炉設置許可処分において要求される安全性の程度は、民事差止請求を排斥する際に要求される安全性の程度よりも高いという一面のあることは否定できない。

また、本件原子炉設置許可処分の無効確認訴訟では、本件原子炉施設の安全性の審査手続上の違法性や、判断過程の過誤を主張することができ、これら手続面に重大かつ明白な瑕疵があれば、それだけで本件原子炉設置許可処分が無効となるのに対し、民事差止訴訟においては、安全審査における手続面に重大かつ明白な瑕疵があっても、実際の災害発生の蓋然性を立証しない限り、それだけでは、控訴人らの生命・身体に被害をもたらす蓋然性があるとはいえないので、差止請求は認められないことになる。

更に、無効確認訴訟においては、本件原子炉設置許可処分の無効事由として、具体的に策定された安全審査基準の不合理性、本件原子炉施設が右安全審査基準に適合していないこと、安全審査における審理手続・判断過程の過誤ないし不合理性等、その主張・立証命題が明示されていることから、本件原子炉施設の建設工事中である現段階でも、本件原子炉設置許可処分の無効についての主張・立証が可能であるのに対し、民事差止訴訟では、本件原子炉施設の設置・運転によって控訴人らの人格権が侵害され、生命・身体に対する被害発生の蓋然性があることを、控訴人ら各人について個別・具体的に主張・立証しなければならないため、本件原子炉施設の建設工事中であり、未だ何らの被害も生じていない現段階で、これを主張・立証することには困難を伴う。

以上によると、民事差止訴訟は「処分の無効を前提とする」現在の法律関係の訴えとはいえず、また、本件原子炉設置許可処分によってもたらされた控訴人らの生命・身体に対する危険・不安を除去するための実効的な救済手段ということもできない。

(2)  被控訴人は、控訴人らに原子炉設置許可処分の取消を求める原告適格が肯定されるとすれば、控訴人らは、同処分の処分要件(特に、原子炉施設の位置、構造及び設備が原子炉等による災害の防止上支障がないものであること)に該当するとして判断された事柄と矛盾・抵触する事柄を主張して、民事差止訴訟を提起することは、同処分の公定力により許されないが、同処分が当然無効であるとすれば、控訴人らは、民事差止訴訟においても右のような主張をして、本件原子炉施設の建設・運転の差止めを求めることも許されることになるので、結局、民事差止訴訟は、同処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴訟(争点訴訟)ということになると主張する。

しかし、控訴人らが、原子炉設置許可処分の際の安全審査に瑕疵があり、適法な許可を受けたものではないことを理由としてのみ、原子炉施設の建設・運転の差止を求めることは、同処分の公定力に反して許されないことになろうが、民事差止訴訟においては人格権等の侵害が審理の対象であり、同処分の違法性や取消事由の有無は直接的には審理の対象になっていないから、控訴人らが、原子炉施設の設置・運転によって人格権を侵害され、自己の生命・身体に対する被害発生の蓋然性があることを理由として、原子炉施設の建設・運転の差止を求めることは、何ら同処分の公定力に反することではない。

したがって、民事差止訴訟が原子炉設置許可処分の無効を前提とする訴訟であるとはいえず、被控訴人の前記主張は理由がない。

(3)  被控訴人は、本件無効確認訴訟においては、審理の対象となる事項が、原子炉施設自体の安全性に直接関係する事項のうちの、更にその基本設計ないし基本的設計方針に係る安全性に限られており、本件紛争の本体的内容の解決のため果たし得る役割も限られたものに過ぎないのに対し、民事差止訴訟においては、原子炉施設の安全性に関係することであれば、直接・間接を問わずあらゆる事項が審理の対象となり、例えば本件原子炉施設から排出される温排水の熱的影響や、本件原子炉施設に核燃料物質を搬入する際の安全性、更には使用済み核燃料の再処理及び運搬の安全性についても審理の対象にできるので、民事差止訴訟の方が無効確認訴訟に比べて、本件紛争解決のための有効・適切な手段であると主張する。

しかし、本件無効確認訴訟においては、審理の対象となる事項が原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針に係る安全性に限られているとはいえ、その安全性の審査に重大かつ明白な瑕疵があれば、それだけで本件原子炉設置許可処分の無効が確認され、控訴人らは法律上保護された利益の侵害状態を直ちに除去することができる実効性があるのに対し、民事差止訴訟では、本件原子炉設置許可処分の無効が認められても、それだけでは民事差止請求が認められるとは限らず、しかも、審理の対象となる事項についても、民事差止訴訟が無効確認訴訟を包摂する関係になるわけではなく、その範囲が一部重複しているに過ぎないのであるから、本件紛争の抜本的な解決手段であるとはいえない。

したがって、控訴人らにとって、民事差止訴訟の方が無効確認訴訟に比べて、本件紛争解決のための有効・適切な手段であるとは認められず、被控訴人の前記主張も理由がない。

(4)  被控訴人は、民事差止訴訟は、原子炉施設を自ら設置・運転し、その安全性の確保につき第一次的かつ全面的な責任を負う立場にある原子炉設置者を相手として、本件原子炉施設によって控訴人らに被害発生の蓋然性があるか否かを直接審理するのに対し、無効確認訴訟は、原子炉設置許可処分が内閣総理大臣の裁量処分であることから、内閣総理大臣の判断を前提に、その判断過程に著しい不合理があって、裁量権の逸脱・濫用があるか否かといった極めて限定された事項について審理するに過ぎないのであるから、民事差止訴訟こそ本件紛争のより直接・簡明な解決手段であると主張する。

しかし、控訴人らは、本件原子炉設置許可処分の際の安全性の審査に重大かつ明白な瑕疵があり、原子炉施設からの災害を受けないという個別具体的な利益を侵害され、自己の生命・身体に対する法的保護を受けられなかったと主張して、被控訴人を相手に本件原子炉設置許可処分の無効確認訴訟を提起しているのであるから、原子炉設置者を相手に民事差止訴訟を提起することが法律上可能であるとしても、そのことから、無効確認訴訟が本件紛争の間接・迂遠な解決手段であるとはいえない。

しかも、原子炉設置許可処分が、原子炉施設の安全性についての専門技術的判断に基づいてなされるところの裁量処分であるとはいえ、安全性の審査・判断に誤りがあった場合に引き起こされるおそれのある災害の重大性、周辺住民の利益侵害の重大性に鑑みると、右の専門技術的裁量権は、処分当時のわが国における最高水準の専門技術的知見に基づいて行使されることを要し、その意味において右裁量性の幅は広いとはいえず、無効確認訴訟が民事差止訴訟に比べて、審理の対象が極めて限定された不充分な解決手段であるとは認められない。

したがって、被控訴人の前記主張も理由がない。

(三)  以上によると、右民事差止訴訟は「原子炉設置許可処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴え」(争点訴訟)には当らず、また、控訴人らは、右民事差止訴訟によっては、本件原子炉設置許可処分のために被っている不利益を排除することができず、「目的を達することができない」と認められ、右民事差止訴訟以外にも「原子炉設置許可処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴え」が存在し、「右訴えによって目的を達することができる」ものとも認められないので、本件原子炉設置許可処分無効確認訴訟は、「当該処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」の要件、即ち無効確認訴訟の補充性の要件を充足することが認められる。

三  結論

以上の次第で、控訴人磯部ほか一六名については、無効確認訴訟の原告適格が認められる適法な訴えであるので、右訴えを原告適格を欠く不適法な訴えであるとして却下した原判決を取消し、本案について審理を尽くさせるため福井地方裁判所に差し戻し、その余の控訴人らについては、原告適格を欠く不適法な訴えであり、右訴えを却下した原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上孝一 裁判官 井垣敏生 裁判官 紙浦健二)

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